中外製薬株式会社(4519)が2026年7月24日に発表した2026年12月期第2四半期(中間期)決算短信(IFRS・連結)を読みます。この記事は発表資料の要点を整理する短評であり、株価の予想や売買の推奨はしません。数字はすべて会社発表の決算短信によります。
この会社は12月期決算なので、今回は4-6月の1四半期分ではなく、2026年1月1日〜6月30日の半年分(中間期)の数字です。金額は百万円未満四捨五入です。
数字の骨格:IFRSとCoreの2本立て
中外製薬の決算資料は、IFRSに基づく実績と、会社が経常的な業績を示すために使う「Core実績」の2種類が並びます。Core実績は、IFRS実績から非経常的な事項を調整した社内指標です。同じ会社の同じ期間について数字が2つ出てくるので、どちらの数字を見ているのかを毎回はっきりさせる必要があります。
まずIFRS実績(こちらが会計基準に基づく主たる数字)です。
| 項目(IFRS実績) | 今中間期 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 6,633億円 | +14.7% |
| 営業利益 | 3,196億円 | +16.9% |
| 当社株主に帰属する中間利益 | 2,317億円 | +19.2% |
次にCore実績です。売上収益は同額で、利益側だけが異なります。
| 項目(Core実績) | 今中間期 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 6,633億円 | +14.7% |
| Core営業利益 | 3,291億円 | +21.0% |
| Core中間利益 | 2,384億円 | +23.2% |
Core営業利益(3,291億円)はIFRS営業利益(3,196億円)を上回り、伸び率もCore(+21.0%)のほうがIFRS(+16.9%)より高く出ます。非経常的な事項を調整した結果としてこの差が生じているので、「増益率が何%だったか」を語るときは、IFRSの数字なのかCoreの数字なのかを明示しないと数字が食い違います。
独自に差額と利益率を同じ売上収益で再計算すると、Core営業利益はIFRS営業利益より95億円大きく、営業利益率はCoreが約49.6%、IFRSが約48.2%で、差は約1.4ポイントです。Core中間利益とIFRS中間利益の差は67億円でした。調整後指標を見る場合も、IFRS実績を消さず二列で残します。
どこで増えたか
売上収益6,633億円の内訳は、製商品売上高とその他の売上収益に分かれます。
| 区分 | 今中間期 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 製商品売上高 | 5,665億円 | +10.8% |
| うち国内 | 2,379億円 | +6.5% |
| うち海外 | 3,286億円 | +14.1% |
| その他の売上収益 | 968億円 | +44.5% |
金額の柱は製商品売上高ですが、伸び率が突出しているのはその他の売上収益(+44.5%)です。会社の説明では、その他の売上収益の増加要因は一時金収入の大幅増と、ヘムライブラ・NEMLUVIOに関するロイヤルティ収入の増加としています。一時金収入は名前のとおり継続性の見方が製商品売上高とは異なるので、増収の中身を読むときは分けて見る箇所になります。
製商品売上高については、国内(+6.5%)より海外(+14.1%)の伸びが大きく、金額でも海外が上回っています。会社の説明は次のとおりです。国内は薬価改定と後発品浸透の影響を受けたものの、主力品のバビースモ、ポライビー、エンスプリング、フェスゴと、新製品のエレビジス、ルンスミオが伸長。海外はロシュ向けヘムライブラ輸出の増加と、ガルデルマへ導出したNEMLUVIOの同社向け輸出の大幅増が要因です。国内は制度要因の逆風を主力品と新製品で押し返し、海外は輸出の増加が伸びをつくった、という整理になります。
なお研究開発費は902億円(+4.5%)です。売上収益の伸び(+14.7%)に対して研究開発費の伸びは緩やかで、この差が利益率の見え方に効いています。
通期予想との距離
通期予想はCoreベースで開示されており、売上収益1兆3,450億円(前期比+6.9%)、Core営業利益6,700億円(+7.5%)、Core当期利益4,850億円(+7.5%)です。「直近に公表されている業績予想からの修正の有無:無」と注記されており、今回は据え置きです。
短信に記載された通期予想に対する進捗率は、売上収益49.3%、Core営業利益49.1%、Core当期利益49.1%です。中間期なので単純計算の基準は50%で、3項目とも50%にわずかに届かない水準に並んでいます。
一方で、中間期の実績の伸び率は売上収益+14.7%、Core営業利益+21.0%で、通期予想の伸び率(+6.9%、+7.5%)を上回っています。上期の伸びのペースが通期の想定より速いのに予想は据え置かれ、進捗率は50%手前、という組み合わせです。決算短信を5分で読む順番で書いたとおり、進捗率だけで判定せず、予想の前提条件と季節性を合わせて見る必要があります。
配当は年間予想132円(第2四半期末66円+期末66円)で、修正の有無は「無」です。前期実績は272円ですが、これには創業100周年記念配当150円が含まれており、普通配当は122円でした。前期実績272円と今期予想132円を並べると大きく減ったように見えますが、比較の土台をそろえるなら普通配当122円と今期予想132円を並べる必要があります。記念配当のような一時的な要素は、こうして分けて読むのが基本です。
次に見る論点
- その他の売上収益(+44.5%)のうち、一時金収入がどこまで下期にも乗るのか。製商品売上高とは性質が違うため、増収の質を見るうえでの分岐点になります。
- 国内の薬価改定・後発品浸透という制度要因の逆風を、主力品と新製品がどこまで押し返し続けられるか。
- 海外を伸ばしたロシュ向けヘムライブラ輸出とガルデルマ向けNEMLUVIO輸出が下期も継続するか。輸出は相手先の動きに左右される項目です。
- 上期の伸び率が通期予想の伸び率を上回る状態で予想が据え置かれていること。今後この差がどう扱われるか。
一次資料は中外製薬の決算短信一覧ページから確認できます。決算短信の各項目をどの順番で読むかは決算書の読み方入門も参照してください。
読解順を整理し直す場合は決算分析の完全ガイド、会社説明との照合は決算短信・決算説明資料の読み方、同じ形式の別例はオービックの第1四半期決算短評へ進んでください。
一次情報の確認記録(確認日:2026-08-23)
- 中外製薬「決算短信・補足資料」一覧。2026年12月期第2四半期の掲載日と資料一式を確認。https://www.chugai-pharm.co.jp/ir/reports_downloads/tanshin.html
- 中外製薬「2026年12月期第2四半期 決算短信」。IFRS実績、Core実績、通期予想を照合。https://www.chugai-pharm.co.jp/cont_file_dl.php?f=FILE_1_77.pdf&src=%5B%250%5D,%5B%251%5D&rep=119,77
- 中外製薬「2026年12月期第2四半期 補足資料」。製商品売上高、地域別内訳、研究開発費を照合。https://www.chugai-pharm.co.jp/cont_file_dl.php?f=FILE_3_77.pdf&src=%5B%250%5D,%5B%251%5D&rep=119,77
- 中外製薬「2026年12月期第2四半期 説明会資料」。増収要因と通期見通しの説明を照合。https://www.chugai-pharm.co.jp/cont_file_dl.php?f=FILE_5_77.pdf&src=%5B%250%5D,%5B%251%5D&rep=119,77
- 中外製薬「2026年12月期第2四半期 説明会スクリプト(質疑含む)」。経営側の説明と質疑の位置を確認。https://www.chugai-pharm.co.jp/cont_file_dl.php?f=OTHER_FILE_1_77.pdf&src=%5B%250%5D,%5B%251%5D&rep=119,77
著者はオッズと決算編集部です。作成方法は、会社の5資料を照合し、IFRSとCoreを別列で再計算する方法です。この記事には広告・アフィリエイトリンクを含みません。