銘柄・業界分析

金利が上がると債券価格はなぜ下がる?

金利と債券価格が反対に動く理由を、額面・表面利率・利回りの違い、具体的な価格計算、デュレーション、信用リスクまで順に解説します。

  • #債券
  • #金利
  • #利回り
  • #デュレーション
  • #資産運用

この記事を「あなたの数字」で読む

この記事を「あなたの数字」で読む・変更する

下の欄にあなたの数字を入れると、本文中の色付きの数字が、あなたの数字で計算し直した目安に変わります。 空欄のままなら、本文は記事の例の数字のままです。

入力は、開いているページの表示だけに使います。ブラウザーには保存せず、当サイトのサーバーや広告会社へも送信しません。別の記事には引き継ぎません。

色付きの数字は、画面の入力値と、空欄では記事内の例を使った機械的な試算です。診断・推奨・個別助言ではありません。オッズ・払戻率・公式の制度値は書き換わりません。

「入力条件に一致」は入力欄の条件が成立した印です。有利・適切・変更すべきという意味ではありません。

この記事の数字

本文はいま、記事の例の数字で表示しています。

「金利が上がると、債券価格は下がる」。金融ニュースでよく聞く関係ですが、初めて見ると不思議に感じます。債券は発行時に受け取る利子が決まっているのに、なぜ市場金利が変わるだけで値段まで動くのでしょうか。

答えの中心にあるのは、発行済みの債券と、いま買える新しい債券の条件をそろえるための価格調整です。新しい債券がより多くの利子を払うなら、利子の少ない古い債券は、価格を下げなければ買い手に選ばれにくくなります。反対に、新しい債券の利子が少なくなれば、以前の高い利子を受け取れる債券には額面を上回る価格が付くことがあります。

ただし、この説明がそのまま当てはまるのは、主に利払いが固定された債券です。実際の価格は、残存期間、信用力、インフレ見通し、市場の売買しやすさなどにも左右されます。本稿では個別商品の推奨や相場予想をせず、ニュースや商品資料を読むための基礎を7段階で整理します。

1. 債券の基本は「将来のお金を受け取る権利」

債券は、国、地方公共団体、企業などが資金を調達するために発行する有価証券です。投資家が債券を買うことは、発行体へ一定期間お金を貸すことに近く、発行体はあらかじめ決めた条件に従って利子を払い、満期に元本を返します。

まず、価格の話に必要な用語を分けます。

用語意味価格が動いたとき
額面金額満期に返される基準の金額通常は市場価格と別に扱う
表面利率額面に対して支払われる年あたりの利子率固定利付債では発行後も変わらない
クーポン実際に支払われる利子固定利付債では原則として一定
市場価格途中で売買するときの値段金利や信用力などで日々変わる
利回り購入価格に対してどれだけの収益を得るかを示す割合価格が下がると上がり、価格が上がると下がる
残存期間満期までに残っている期間長いほど金利変化の影響が大きくなりやすい

たとえば、額面100円、表面利率1%の固定利付債なら、年1回払いという仮定では年1円の利子を受け取り、満期には額面100円が返る契約です。途中の市場価格が95円や105円に変わっても、発行体が契約どおり支払う限り、年1円というクーポン自体は変わりません。

ここで注意したいのが、表面利率と利回りは同じではないことです。100円で買って年1円を受け取る場合の単純な利率は1%ですが、95円で買えば、同じ年1円でも購入額に対する割合は高くなります。さらに満期まで持てば、95円で買ったものが100円で償還される差額も収益に加わります。逆に105円で買えば、満期に100円しか戻らない差額を考慮する必要があります。

2. 市場金利との綱引きで価格が調整される

発行済みの固定利付債を持っている場面を考えます。その債券は額面100円、年1円の利子を払うとします。発行後に市場金利が上がり、同じ残存期間と同程度の信用力を持つ新しい債券が、額面100円に対して年3円の利子を払うようになったとします。

古い債券を100円で買うと年1円、新しい債券を100円で買うと年3円です。他の条件が同じなら、買い手は新しい債券を選びます。そこで古い債券は、将来受け取れる年1円の利子と額面100円を、新しい市場環境で見合う水準にするまで価格が下がります。安く買える分を含めることで、満期までの利回りが市場の水準へ近づく仕組みです。

反対に、市場金利が1%から0.5%へ下がり、新しい債券の利子が少なくなれば、年1円を受け取れる古い債券の価値は相対的に高まります。そのため、市場価格は額面100円を上回ることがあります。ただし、どこまで上がるかは、残りの利払い回数や満期までの期間によって違います。

日本銀行は、国債の価格が上昇すると利回りは下落し、価格が下落すると利回りは上昇する関係を説明しています。財務省も、国債の最終利回りは購入価格、表面利率、償還までの期間から算出され、一般の市場性国債を満期前に売却する場合、市場金利が購入時より高ければ売却損が出ることがあると案内しています。

この「金利と価格が反対に動く」という表現は、固定利付債を比べるときの基本です。変動利付債では、基準金利に応じて将来の利子自体が見直されるため、固定利付債と同じ幅で価格が動くとは限りません。また、個人向け国債には市場で売買する一般の国債とは異なる中途換金の仕組みがあります。商品ごとの条件を読まず、すべての債券を一括りにしないことが大切です。

3. 簡単な価格例で「現在価値」を見る

債券価格は、将来受け取る利子と元本を、現在の市場利回りで割り引いた金額の合計として考えられます。年1回利払いの単純化した固定利付債なら、価格は次の形です。

価格 = C/(1+r) + C/(1+r)^2 + … + (C+F)/(1+r)^n

Cは1年分のクーポン、Fは額面、rは市場が求める年利回り、nは残存年数です。「割り引く」とは、将来受け取るお金を、同じ期間に別の運用で得られる利回りと比較し、いまの価値へ換算することです。

額面100円、年1円のクーポン、残存5年、市場利回り3%と仮定します。各年の受取額を3%で現在価値へ直すと、試算価格は次のようになります。

1/1.03 + 1/1.03^2 + 1/1.03^3 + 1/1.03^4 + 101/1.03^5 = 約90.84円

満期に額面100円が返る債券でも、いまの市場が同程度の債券に3%の利回りを求めているため、表面利率1%の債券は額面より安くなります。約90.84円で買えば、年1円のクーポンに加え、満期に100円で償還される差額を受け取れるため、全体の利回りが3%になる計算です。

この例は仕組みを示すため、年1回払い、取引費用・税・経過利子なし、満期まで保有、途中償還なし、発行体がすべて契約どおり支払う、市場利回りは全期間で同じ、という前提を置いています。日本国債では通常の利付国債の利子は半年ごとに支払われるため、実際の計算では支払頻度を合わせる必要があります。市場では同じ年限でも銘柄ごとの需給や流動性が価格へ反映されるため、この単純式だけで売買価格を再現できるとは限りません。

4. 残存期間が長いほど金利変化の影響が大きい

同じ表面利率でも、満期まで1年の債券と10年の債券では、金利変化に対する価格の動き方が違います。長い債券ほど、固定された利子を受け取り続ける期間が長く、現在の市場金利との条件差が何度も積み重なるからです。また、遠い将来に受け取る元本は、利回りが少し変わるだけでも現在価値が大きく変わります。

残存1年のゼロクーポン債を例にすると、額面100円、市場利回り1%の価格は約99.01円です。利回りが2%になれば約98.04円で、下落率は約0.98%です。一方、残存10年なら、同じ条件で約90.53円から約82.03円へ下がり、下落率は約9.39%になります。これは利払いのない単純な理論例ですが、期間が長いほど金利感応度が高まる方向を確認できます。

ただし「長期債は必ず短期債より大きく下がる」と、条件を省いて断定するのは危険です。比較には、利回りの変化幅だけでなく、クーポン、信用力、通貨、償還条項などをそろえる必要があります。一般にクーポンが低いほど、受取額の多くが満期の元本へ偏るため、同じ満期の高クーポン債より金利変化の影響を受けやすくなります。

保有者にとって重要なのは、満期まで持つ予定か、途中で売る可能性があるかです。発行体が債務不履行に陥らず、満期まで保有できる個別債券なら、途中の市場価格が下がっても、契約上のクーポンと額面償還が直ちに減るわけではありません。しかし、途中売却が必要になれば、その時点の価格で損益が確定します。満期のない債券ファンドでは、個別債券を満期保有する場合と同じ説明はできず、基準価額が保有債券の価格変動を反映します。

5. デュレーションは価格変化の目安

金利が変わったとき、債券価格がどの程度動きそうかをまとめて表す指標がデュレーションです。単に「満期まで何年か」ではなく、各クーポンと元本を受け取る時点を、その現在価値で重み付けして平均したものがマコーレー・デュレーションです。そこから利回りの影響を調整した修正デュレーションは、金利変化に対する価格変化率の近似に使われます。

近似式は次のように表せます。

債券価格の変化率 ≒ -修正デュレーション × 利回りの変化幅

修正デュレーションが4.75、利回りが0.01、つまり1パーセントポイント上昇したと仮定すると、価格変化率はおよそマイナス4.75%です。前節の額面100円、年1円、残存5年、市場利回り3%の例を年1回払いとして計算すると、マコーレー・デュレーションは約4.90年、修正デュレーションは約4.75です。

この4.75%の下落近似を保有額100,000円に当てはめると、値下がり額の目安は4,750円、近似後の評価額は95,250円です。

ここで「4.75年」は、4.75年後に満期が来るという意味ではありません。また「金利が1%上がれば必ず4.75%下がる」という保証でもありません。この式は、他の条件が変わらず、利回りの変化が小さく、利回り曲線が概ね平行に動くと仮定した一次近似です。変化幅が大きいと、債券価格と利回りの曲線的な関係、つまりコンベクシティの影響が無視できなくなります。

実際のデュレーションは、利払い頻度、満期、クーポン、現在価格、利回りに加え、期限前償還条項などにも左右されます。債券ファンドの商品資料に「デュレーション5年」とあれば、満期5年の債券だけを持つという意味ではなく、保有資産全体の金利感応度を集約した目安として読みます。

6. 金利以外にも信用・インフレ・流動性リスクがある

債券価格が下がったとき、その原因をすべて「金利上昇」で説明することはできません。少なくとも次のリスクを分けて見る必要があります。

信用リスク

発行体が利子や元本を予定どおり支払えない可能性です。企業の財務悪化などで信用力への評価が下がると、国債など信用力が異なる債券との利回り差が広がり、価格が下がることがあります。この差は信用スプレッドと呼ばれます。市場全体の基準金利が変わらなくても、発行体固有の事情で価格は動きます。格付けは判断材料の一つですが、将来の支払いを保証するものではありません。

インフレリスク

固定された利子と元本の名目額が契約どおり支払われても、物価が上がれば、そのお金で買える商品やサービスは減ります。期待インフレ率が上がると、投資家がより高い名目利回りを求め、固定利付債の価格へ下押し圧力がかかることがあります。物価連動国債のように元本が物価へ連動する設計もありますが、一般の固定利付債とは商品性が異なります。

流動性リスク

売りたいときに買い手が少なく、希望する価格で売れないリスクです。取引の少ない銘柄では、買値と売値の差が大きくなることがあります。理論価格が同じでも、すぐ換金できる銘柄と売買が難しい銘柄には価格差が生じ得ます。

為替・期限前償還などの商品固有リスク

外貨建て債券の円換算損益は、債券価格だけでなく為替レートでも変わります。また、発行体が満期前に償還できる条項がある債券では、金利低下時に高いクーポンを受け取り続けられない場合があります。仕組みが複雑な債券では、参照指標や償還条件も確認が必要です。

債券は預金とは異なり、一般に元本保証の商品ではありません。「国債」「社債」「債券ファンド」「個人向け国債」は、売却・換金方法や価格変動の扱いが違います。名称だけで安全性を決めず、発行条件や目論見書、契約締結前交付書面を確認する必要があります。

7. 金利ニュースを読むための確認順

ニュースで「長期金利が上昇」「債券価格が下落」と報じられたら、次の順で確認すると、政策金利の話と自分が持つ商品の値動きを混同しにくくなります。

  1. どの金利か
    中央銀行が誘導する短期の政策金利なのか、国債市場で形成される特定年限の利回りなのかを確認します。「金利」は一つではなく、期間ごとに水準が異なります。

  2. 何年物の利回りか
    2年、5年、10年、30年など、どの年限が動いたのかを見ます。すべての年限が同じ幅で動くとは限りません。期間ごとの利回りを並べたものが利回り曲線です。

  3. 名目金利か実質金利か
    名目金利には物価上昇の影響が含まれます。経済の引き締まりやすさを考えるときは、期待インフレ率を差し引いた実質金利が話題になることもあります。両者を入れ替えて読まないようにします。

  4. 対象は固定利付か変動利付か
    固定利付債は市場金利の変化を価格で調整しやすい一方、変動利付債は将来の利子が見直されます。個人向け国債には一般の市場性国債と異なる換金条件があります。

  5. 残存期間とデュレーションはいくつか
    同じ金利変化でも、金利感応度が高い商品ほど価格の変化率が大きくなりやすくなります。債券ファンドなら平均残存年限だけでなく、デュレーションも確認します。

  6. 信用スプレッドも動いていないか
    社債の利回り上昇が、国債金利の上昇なのか、企業への信用評価の悪化なのかを分けます。二つが同時に起きる場合もあります。

  7. 保有目的と必要時期に合うか
    満期まで保有する個別債券と、途中売却する個別債券、債券ファンドでは、価格下落の意味が違います。使う時期が決まっているお金なら、利回りだけでなく換金条件と価格変動幅を確認します。

金利上昇は、既に持つ固定利付債の価格には逆風になりやすい一方、新しく債券を買う人には、より高い利回りで運用できる機会にもなります。また、保有中に受け取った利子を再投資する場合、金利上昇は再投資利回りを高める方向に働きます。したがって「金利上昇は債券に悪い」と一言で終わらせず、現在の価格、将来の受取額、保有期間、再投資の四つを分けて考えることが重要です。

数値例と確認ポイントのまとめ

見る項目本稿の例・目安読み取れること
額面100円・年1円・残存5年の固定利付債市場利回り1%なら100円、3%なら約90.84円市場利回りが表面利率を上回ると、価格は額面を下回りやすい
残存1年のゼロクーポン債利回り1%から2%で約0.98%下落残存期間が短いと、同じ金利変化でも価格への影響は比較的小さくなりやすい
残存10年のゼロクーポン債利回り1%から2%で約9.39%下落残存期間が長いほど、金利変化の影響が大きくなりやすい
修正デュレーション4.75利回りが1パーセントポイント上昇すると約4.75%下落する近似実際の変化率を保証する値ではなく、小さな金利変化に対する目安
満期前の売却市場価格で損益が確定額面償還の予定があっても、途中売却価格は額面と一致しない

表中の価格は、本文と同じ単純化した条件による理論値です。税、手数料、経過利子、信用力や流動性の変化は含みません。

よくある質問

金利が上がっても、満期まで持てば損をしませんか?

発行体が契約どおり支払い、個別債券を満期まで保有すれば、途中の市場価格が下がっても、予定されたクーポンと額面償還は通常そのままです。ただし、額面を上回る価格で買った場合の償還差損、信用リスク、インフレによる実質価値の低下、より高い金利へ乗り換えられない機会費用は残ります。

金利が1%上がると、債券価格はいくら下がりますか?

一律には決まりません。「1%」が1パーセントポイントの上昇を指すなら、修正デュレーションが5の債券は約5%下落するのが一次近似です。クーポン、残存期間、利回りの変化幅、コンベクシティなどによって実際の値動きは変わります。

「長期金利が上がった」と「政策金利が上がった」は同じですか?

同じではありません。政策金利は中央銀行が金融政策で扱う短期金利の一つで、長期金利は主に長期国債市場で形成されます。政策変更への予想、物価見通し、需給などを通じて連動することはありますが、常に同じ時期・同じ幅で動くわけではありません。

債券ファンドも待てば額面で戻りますか?

一般的な債券ファンドには、個別債券のような一つの満期や額面償還がありません。保有銘柄を入れ替えながら運用するため、基準価額はその時点の金利、信用力、為替などの影響を受け続けます。分配金が出ても、購入価格への回復を保証するものではありません。

個人向け国債も金利上昇で同じように値下がりしますか?

個人向け国債は、一般の市場性国債を市場価格で売る仕組みとは異なり、国が定めた条件で中途換金します。原則として発行後1年は中途換金できず、換金時には直前2回分の利子相当額が差し引かれるなど、商品固有の条件があります。購入時点の最新条件は財務省の公式資料で確認してください。

関連記事

本稿の計算例は一般的な仕組みを理解するための試算であり、特定の金融商品を推奨するものではありません。実際の投資判断では、商品ごとの手数料、税、信用力、通貨、換金条件、償還条項を公式資料で確認してください。

一次情報の確認メモ

確認日: 2026-07-23